「ずっとこの時を待っていたよ……。」 その花はほんの僅かに紅を帯びていて 闇の中でぼおと浮かび上がるように咲いていた。 そしてその花の花びらが雪のように舞い散る中、 人は幻想を見るのだろうか。 彼の人の掌がするりと体を撫でていき 軽く顎を持ちあげてくる。 惑わすように薄紅色の花びらが舞い、 間近に見える彼の人は薄く微笑みながら 覆いかぶさってくるのを 薄れてゆく感覚のなかで受け入れようとしていた。